校長だより

本気で育てよう。21世紀型能力

2017年3月25日

約10年に一度見直されてきた学習指導要領が全面改訂され、その内容がこの3月中に告示される予定です。小学校への導入は2020年からで、その1年後に中学校に、さらにその1年後に高校に導入される予定です。小学5年生から英語を正式な教科とする、PCの活用とプログラミング的思考の育成を小学生のうちから始める、高校の社会は、近現代史を学ぶ「歴史総合」、国際理解を進める「地理総合」、社会参画へ意識を高める「公共」を必修科目とする、などが教科的な変更点ですが、最も注目すべき点は、アクティブラーニング(能動的学習)を小中高の全教科に導入し、生徒の学び方、教師の指導の仕方、評価の仕方を変えていくことです。 そこで今回は、次期学習指導要領が入試にもたらす影響と今後の対策について、本年度のICU高校と東京学芸大学付属国際中等教育学校の入試結果をもとに考えたいと思います。この2校を取り上げるのは、どちらも書類や面接による試験を採用することで、次期学習指導要領が求めるのと同様の能力を持つ生徒を見極め、選んできた学校だからです。また、両校とも確かな実績を重ね、高い人気を集めてきた学校でもあります。

【ICU高校の入試結果より】
本年度のICU高校の入学試験には、過去最高数の受験者が集まりました。帰国枠だけで、664名が受験し、合格者数は288名、実質倍率は2.3倍でした。この受験者数は、日程を分けて実施している3種類の試験「推薦入試」、「書類選考入試」、「学力試験」の合計数で、それぞれの実質倍率は、2.05倍、2.44倍、3.89倍でした。
「学力試験」は、募集人数が少ないため例年倍率が高くなりがちですが、特に今年は、最高倍率だった昨年度をも超える倍率になりました。一方、書類選考ならびに面接試験のみで行われる「推薦入試」と「書類選考入試」は、比較的敷居の低い試験ですが、倍率を見ると、今年はこちらもかなり厳しい入試だったと言ってよいでしょう。
今年の「推薦入試」では、英検1級を持っていても不合格となった生徒がいました。予想外の結果に驚き、直接ICU高校に問い合わせてみると、今年は例年以上に優秀な生徒が集まったため、厳しい判定をせざるを得なかった、とのことでした。

【学芸大付属国際中等教育学校の入試結果より】
中学入試における東京学芸大学付属国際中等教育学校も、昨年比では微増ですが、過去最高数の受験者が集まりました。受験者数は、336名で、合格者数は71名、実質倍率は4.73倍でした。この受験者数は、2種類の試験「A方式(作文検査)」、「B方式(適性検査)」の合計数で、それぞれの実質倍率は、4.94倍、4.48倍でした。
選抜方法は、いずれの方式も、志願理由書・報告書または成績証明書・活動実績申告書などの書類を重視し、面接のほか、「A方式」では、外国語作文と日本語作文を、「B方式」では、2種類の適性検査(理数分野/社会分野)を課しています。こちらも比較的手軽に受けられる試験ですが、倍率的にはかなり厳しい入試だったと言えます。

【大学入試改革と次期指導要領がもたらす影響】
上記の2校に人気が集中するのは、教育内容もさることながら、卒業後の進路にも期待がもてるからです。現在のところ、この2校のような入試形態を用いながらも競争率が高い学校は他にありませんが、今後は様子が変わるかも知れません。
昨年からは東大や京大でも推薦入試(京大では、名称を「特色入試」としています)が始まるなど、どの大学でも書類・面接重視型の募集枠が増える傾向にあります。そのような大学の入試改革に連動して、書類・面接重視型入試を実施している中学・高校の進学実績も、やがて上がっていくはずです。すると、書類・面接重視型入試を採用する学校はさらに増え、その中で新たな人気校も現れることでしょう。
一方、冒頭にも述べたとおり、次期指導要領が育てようとしている生徒像は、書類・面接重視型入試で選ばれる生徒像と一致しています。そのため、新しい学習カリキュラムの中では、書類・面接重視型試験への対応に長けた生徒が「大量生産」される可能性があります。そうなると、書類・面接重視型で人気を集める学校の合否の判定基準は、ますます厳しくなるでしょう。そのような学校の入試で際立った存在になることは、容易でないだろうということが予想されます。

【書類・面接重視型入試に合格するには】
ここまでの内容から、書類・面接重視型入試を実施する人気校の入試における難易度は、ますます高くなるということが、お分かりいただけたかと思います。では、一体どのような対策をとれば、書類・面接重視型入試で合格できるのでしょうか。
実際のところ、書類・面接重視型入試実施校が、各地から集まる受験生をどのようにして評価しているのか、受験する側には見えません。学校側に直接伺ったこともありますが、お答えいただけませんでした。そもそも、合格の基準は受験生次第で変わり、答えようがないのでしょう。
ただ、ICU高校については、JOBAの「センター試験データ」から、注目すべき傾向が見て取れます。JOBAのセンター試験は、英語、数学、国語の学科試験ですが、受験者の成績を比較していくと、「推薦入試」、「書類選考入試」の合格者と不合格者が、ある偏差値を境にほぼ分かれるのです。
これは、センター試験の結果が、ICU高校の「推薦入試」や「書類選考入試」で重視される「学校の成績」と比例関係にあることを反映していると思われます。つまり、センター試験で高得点をとれる生徒は概して学校でも良い成績を収める傾向にあり、従ってICU高校の「推薦入試」や「書類選考入試」でも合格しやすい、ということが言えるのです。意外に思われるかもしれませんが、日本人学校の成績だけでなく、現地校の成績も、センター試験の成績と相関関係があります。日本型で勉強した英語も数学も、国語を通して養う論理力も、現地校での勉強に役立つのです。
ちなみに、センター試験で好成績を収めてきたにも関らず、ICU高校の「推薦入試」や「書類選考入試」で不合格になる生徒がいます。その多くは、現地校生活が2年程度の生徒です。これは、2年程度の現地校生活では、学校の授業で力を発揮するだけの英語力が十分に伸びず、ICU高校の「推薦入試」や「書類選考入試」における学校成績の合格基準に達しにくいということを表しているでしょう。
以上から、書類・面接重視型入試実施校に合格するために最も大事なことは、何よりもまず、学校の成績を上げることだと考えられます。

【学校での成績を上げるために必要な力】
センター試験で良い成績を収められるだけの確かな学力がつけば、学校成績にも反映されるはずです。ただし、次期学習指導要領のもとでの新たな日本の学校教育においては、それだけでは十分に良い成績は得られないでしょう。確かな学力に加え、今後はどのような力が求められるようになるのでしょうか。以下に挙げるのは、次期学習指導要領が求める学習者像の中で、現在の日本人生徒に不足していると思われる力です。
① 主体的に学ぶ力。
② 協働的に学ぶ力。
③ 創造的に学ぶ力。
①は、自ら進んで学ぶ力です。つまり、わからない点は質問することができ、また、授業やグループ学習の際に、課題の解決に貢献しようとする力です。②は、グループで友達と協力して学ぶことができ、またグループを超えて、地域や世界中の人と交流・対話して自らの学びを深めていく力です。③は、既存の考え方を鵜呑みにせず、新しい考え方を思いつく力です。
これらの力を身につけることは大変なことですが、子供たちは、まずは学力以外に、このような力を求められるようになると知っておくことが大事でしょう。
なお、現地校では、ずいぶん前から次期学習指導要領と同様に、能動的な学習者像を理想としています。ですから、日本の書類・面接重視型入試実施校を目指す現地校生も、上記の3つの力を意識して、現地校の成績を上げることに集中すると良いでしょう。

【評価されるのは主体性】
では、具体的に何をすれば、次期学習指導要領/現地校の学習カリキュラムの中で、良い成績を得ることができるのでしょうか。参考として現地校に通う生徒から学校の成績と先生方の評価コメントを見せてもらうと、肯定的なコメントには次のような言葉がよく見受けられます。
・必要に応じよく質問をする。
・必要に応じ助けを求められる。
・ディスカッションに積極的に参加する。
・レポートの内容も丁寧で、意欲的に課題に取り組んでいる。
・遠慮なく発言できるようになった。
日本では、わかったときに手を上げて発表することはよしとしても、わからないときに質問したり助けを求めたりすることについては、それほど評価してこなかったのではないでしょうか。対して、十分な英語力が身につく前の生徒の評価には、「あまり発言しない」「ディスカッションに参加しない」など、右記の反対内容のコメントが多く見受けられます。話せないのだから仕方がないではないかとも思えますが、現地校の先生方が評価しているのは、決して英語力ではないのです。
これらのコメントからわかるのは、現地校の先生方は、英語力以前に、学習に対して主体的であるかどうかを特に重要視しているということです。今後は日本でも、主体性に重きをおいた評価をするようになるでしょう。

【主体的になる方法】
興味のない教科について、あるいは英語もままならない段階で、主体的に勉強するのは、容易なことではありません。というよりも、無理だと言った方が良いかもしれません。では、どうすればよいのでしょうか。
答えは簡単で、主体的であるかのように振舞えばよいのです。それならば何とかできそうですし、しばらくの間は相手に気づかれることはありません。主体的かどうかは、相手の態度から測るしかなく、本心まではなかなかわからないからです。
いずれその本心は見透かされるかもしれませんが、主体的に振舞っているうちに、勉強が楽しくなり、本気になる可能性もあります。生徒には、まずは形だけでもいいから、積極的に授業に臨んでほしいと思います。現地校に通う生徒であれば、正しい英語でなくて良いので、発言しましょう。ミスがあっても構わないので、締め切りを守り、精一杯レポートを書きましょう。皆の前で質問するのが怖ければ、授業の後に先生のところに行って質問することです。先生方に自ら助けを求めることも、十分に主体的であると言えるのです。

【ご家庭でできること】
次期学習指導要領が生徒に求める力は、先行き不透明な現代社会を生きるうえで、欠かせないものとなるでしょう。これらの力の養成を学校だけに任せていて良いはずがありません。
主体的に「振舞う」ことができたとしても、なかなか本物にはならないかもしれません。家庭では、子供をよく観察し、適宜励ましの言葉をかけることが大事です。協働的に学ぶ力がつくよう、学校以外にも、そのような場を見つけ、参加を促すことも必要かもしれません。創造的に学ぶ力は、子供と一緒にニュースを見ながらでも養えるでしょう。「なぜだろう。」、「どうしてだろう。」「本当かな。」など、質問や疑問を気軽に言い合える環境さえ作れれば、それだけで大きな効果があるはずです。どのご家庭でも、主体的に学ぶ力、協働的に学ぶ力、創造的に学ぶ力が身につくよう、工夫していただきたいと思います。

【JOBAにできること】
学校が社会に出るための練習場だとすれば、我々は学校で活躍してもらうための練習場だといえるかもしれません。我々には、「センター試験型」の学習指導に加え、次のことができると考えています。

  1. 主体的になる練習
    授業内容について、教えすぎることなく、自分で考える機会を増やし、わからないことは質問する姿勢を養います。また、授業中には必ず1回は質問または発表をしてもらいます。
  2. 協働的に学ぶ練習
    我々がこれまでに行ってきた特別授業やJピックなど各種イベントに、生徒同士が協働的に活動し、学びあう場を設けます。
  3. 創造的に学ぶ力の養成
    授業や宿題を通して、質問や疑問点を考え発表してもらう機会を設けます。自ら課題を見つけ、調べ探求することを奨励します。

今後、ICU高校や東京学芸大学付属国際中等教育学校のような入試形態の人気校が増えて、それらの学校の入試の難易度が上がることが予想されます。また、学力重視の入試を実施する学校でも、これからは、生徒が次期学習指導要領の求める力を持っているかどうかを、何らかの形で試すようになるでしょう。受験現場におけるそれらの潮流の中でたたかうには、生徒たちは真の学力を養わなければなりません。JOBAも積極的に、そのお手伝いをしていく所存です。

最新のアクロバットをダウンロード
「パンフレット」「申込書」をご覧いただくには、アドビシステムズ社で配布されている Adobe Readerが必要です。最新の Adobe Readerはこちらから無料でダウンロードできます。

ページの先頭へ戻る