現地校・国際校に通う高校生が受けるのは「帰国枠入試」ですが、在英の日本の高校に在籍する生徒は通常、AO(自己推薦を含む)または一般入試を受験することになります。現地校・国際校生もAO入試を受けられますが、帰国枠とAO入試は大学・学部により内容が大きく異なることも少なくないため、併願を検討している高校生には入試制度の違いや難易度について説明するようにしています。
〈AO入試について〉
AOはアドミッション・オフィス(入学事務室)の頭文字です。入試制度の名前が「入学事務室」であることがこの入試の実態をわかりづらいものにしていると言えるかもしれません。
高校生と話していると、AO入試が「一芸入試」という意味で理解されていると感じることがありますが、実際はそうではありません。AO入試には、確かにプレゼンテーションやディスカッション能力、スポーツ大会や各種コンクールの入賞実績で勝負するものもありますが、このような「一芸型」だけではありません。この場では複雑なAO入試大きく「英語型」「活動実績型」「論文型」「帰国枠型」の四つに分け、わかりやすく説明します。
1.英語型
AO(または自己推薦)入試の出願前に取得した英語の試験(TOEIC、TOEFLなど)で出願するものです。JOBAの進路面談では英検について問われることがありますが、今の大学受験はTOEICまたはTOEFLが主流です。この英語の試験の他に、面接または面接・小論文試験が課されます。
2.活動実績型
ボランティア、部活動(文系・体育系いずれも可)、高校での委員会活動などの活動実績をレポートにして大学に送ります。JOBA高校部の卒業生には、これら以外の活動―模擬国連への参加などーで出願した人もいます。いずれも期間の長さではなく、文章で表現でき、面接でも具体的に話せるものであるかどうかが重要です。
3.論文型
AO入試の出願締切までに論文を書き、それを他の出願書類と合わせて送付するものです。この入試で求められる論文のレベルは大学により異なりますが、人気のある大学・学部は論文の難易度が高く、大学の学期末レポートや試験と同じと言っても良いでしょう。
4.帰国枠型
帰国枠入試の標準的な受験科目「小論文・英語・面接」、「小論文または英語・面接」と同じですから、これを「帰国枠型」と名づけてみました。現地校・国際校生がAOと帰国枠を併願する際にもよく用いられる入試制度です。
〈AO入試合格に向けて〉
本項では、各種AO入試合格に向けた高校在学中の課題をお伝えします。
1.英語型
TOEICまたはTOEFLの得点を上げることが優先課題です。TOEICとTOEFLは出題傾向が異なるため、自分にはどちらの試験が向いているかを見極める必要がありますが、TOEICより難易度が高いTOEFLの高得点は高く評価されます。TOEFLも視野に入れた勉強を進めてください。
2.活動実績型
ボランティアや部活動、委員会活動に積極的に参加をするのは言うまでもありませんが、活動を始める前にその内容をよく調べることが大切です。また、仮にレポートや面接で訴えられるような中身のある活動をしていたとしても、それを文章や言葉で表現する力がなければ、活動実績型のAO入試は向いていないことになります。まず日頃から、課外活動を通して何を得たかを考える習慣をつけましょう。
3.論文型
政治経済の学習と、新聞(ネットニュースではなく)や本(主に論説文)を読むことが、この論文型入試の土台を育てます。しかし、過去十年にわたる高校生の受験指導を通して感じたのは、在英の日本人高校生にとって新聞や論説文を「日常的に・継続して」読むのは難しいということです。JOBA高校部では、そのような高校生のために新聞記事を配布し、読み方を詳しく解説する授業を行っています。
4.帰国枠型
英語の学科試験にエッセーや英作文が含まれる場合は、正確な文法と「書き言葉」で書く力を身につける必要があります。発音問題を出題する大学もありますが、最近は学校で発音記号を習った経験のない高校生がほとんどですから、発音記号は基本から勉強をしなければなりません。小論文の対策は「三、論文型」に述べたものと重なりますが、重要なのは小論文の執筆経験ではなく、文系・理系を越えた幅広い知識を習得し、入試で問われる問題について様々な切り口から意見を述べられるようにすることです。
最後に添えておかなければならないのは、評定平均(高校の成績を数値化したもの)を重視する大学・学部もあるという事実です。副教科もしっかりと勉強しましょう。
2012年11.12月号
JOBAロンドン校 高校部責任者 仙波 未奈美