校長だより

ピーター・スコットが伝えたかったこと

2013年4月25日

ラムサール条約をご存知でしょうか。世界各地の湿地を守ることを目的に開かれた国際会議で採択された条約のことで、その国際会議の会場がイランの風光明媚な湿地帯がある町ラムサールであったことから、ラムサール条約と呼ばれています。

ラムサール条約が採択されたのは1971年のことですが、当時の日本では、工場やゴミ処理場、または住宅建設を目的にした干潟の干拓などが各地で行われていました。当時は経済優先で、湿地を守ることの重要性に気付いた人はほとんどいなかったのかもしれません。

1975年に締約国数7ヶ国から始まったラムサール条約には、現在では165ヶ国が加盟し、条約湿地の総数は2118ヶ所に上っています。そして、この条約に最も多くの湿地を登録しているのがイギリスです。その数は169ヶ所で、日本の46ヶ所を大きく上回っています。

なぜイギリスが世界随一の湿地保護国に発達したのか、その理由を探ると、ピーター・スコットという人の存在を抜きにしては考えられないことがわかりました。

ピーター・スコットは、南極大陸探検をしたロバート・スコット大佐の子供ですが、父親を3歳のときに失いましたので、父親を尊敬しながらも探検家とは無縁の生活を送りました。そして、動物好きだったピーターは、ある時から野鳥と湿地の保護活動に全力を注ぐようになります。1946年には、WWTを設立し、絶滅しかけている世界中の野鳥の保護や湿地保全に向けた教育活動を行いました。その結果、世界中の自然保護活動家にピーター・スコットの存在とその考え方が知れ渡り、ラムサール条約締結に繋がったと考えられています。

ピーター・スコットが教育活動を通して伝えたのは、湿地には、水の浄化作用や洪水を防ぐ働きがあるなどといった実質的な利用価値だけではありません。自然は、すべての人々の心を豊かにできる存在なのだと伝えてきたのです。またWWTが英国内9か所に作ったウエットランドセンターを通して、人々に自然の楽しみ方を伝えました。

5月5日(日)には、3教室合同の遠足Jトリップでポーツマス近くのラングストン湾に行きます。ラングストン湾はラムサール条約に登録された大きな干潟で、現地ではカヌーによる海辺の探索、潮干狩りのほか、現地の人に干潟の生物や保全方法などについてお話を伺う予定です。

今回のJトリップでは、自然と戯れることは本当に楽しいことであること、そのような自然を損ねることは、未来の人々のためにも、あってはならないことであることに気付いてほしいと思っています。

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