5月5日(日)には、3教室の生徒115名を連れてポーツマス近くのラングストン湾に行ってきました。ラングストン湾は、干潮時には大きな干潟が現れる内海です。私たちがラングストン湾に到着するとほぼ同時に潮が引き始め、泥地がみるみるうちにその姿を表しました。この姿をみた私は、唖然とさせられました。事前にJトリップ実行委員に聞いてはいたものの、あまりに美しくなかったためです。そして、これまでに世界中で多くの干潟が干拓されてきた理由がわかったような気がしました。景勝地にならない干潟を埋め立てて役立てようと考えた人がいても全く不思議ではないと思ったからです。
ところが、こんな私もカヌー遊び、潮干狩りなどをするうちに干潟の魅力に取りつかれていきました。潮干狩りではアサリがいるだろうと思われる砂泥地までは係員の許可が下りず行けませんでしたが、それでもウミニナ(タニシに似ている)や小さなカニやエビなどに出会うことができ、童心に返ったようにその場を楽しむことができました。干潟は、渡り鳥など野鳥の休憩地として大事であるだけでなく、人々の心を豊かにする掛け替えのない存在であることをあらためて認識した思いです。
さて、ラングストン湾がラムサール条約に登録された湿地であることは、前月のこのコラムでお伝えした通りです。なお、前月には十分にお伝えできませんでしたが、ラムサール条約の特徴は水鳥(渡り鳥)を守ることに重きをおいていることです。このため、潮干狩りで見つけた生き物を持ち帰ることは、鳥の餌をうばうことになるため一切許されませんでした。
しかしそもそも、なぜ水鳥を守る必要があるのでしょう。ラムサール条約のどこを読んでもその説明はありません。私たちは、このJトリップに出かける前に特別授業を行い、ラムサール条約と湿地を守ることの重要性について生徒に話をしました。その際に「なぜ水鳥を守る必要があるのか、鳥はどこにでも飛んでいけるし、そもそも私は鳥が嫌いだから鳥を守らなくてはならない理由がわからない。」というような生徒の発言がありました。そう問われ答えに窮しました。湿地が減り絶滅に瀕した水鳥が増えてきたからというその場の返答は十分ではないだろうと思ったからです。納得のいく答えを探そうと、Jトリップの間も帰ってからもずっと考えていました。
私が辿り着いたこの問いへの答えは、鳥インフルエンザです。鳥インフルエンザが発生・流行した現在の世界状況を考えれば、むやみに埋め立てをせず、水鳥も守らなくてはならない理由がわかります。水鳥のえさ場や休憩地を奪えば、体力が衰えた水鳥はウイルスに侵されやすく、さらに一旦感染すると渡り鳥であるため他の多くの鳥に伝染させやすいはずです。動物愛護精神からだけでなく、人々の健康にも影響を与えるような重大事に繋がるから、水鳥を守らなければならないのだといえるのではないでしょうか。