突然の帰国辞令を受けられる保護者の大半は、まず子供の編入先を検討なさるようです。しかし、もし子供が高校生であれば、必ずしも「帰国=編入先の検討」という流れにはなりません。高校生の場合は「単身滞在をさせるか、高校編入のために家族と一緒に連れて帰るか」のいずれかをご選択いただくことになります。今回は、その決め手となるのは何かをお伝えします。
■志望大学・学部から決める
帰国辞令を受けられた方には進路面談をご用意し、編入・単身滞在のいずれが望ましいかを一緒に検討させていただいています。その面談を経て、今年も多くの高校生が単身滞在という道を選びました。それは「高校の最終学年を海外で終えていること(在外の日本の高校は含まない)」を出願資格とする大学を目指しているからです。日本の高校に編入しても、帰国枠で受験できる大学はあるのですが、難関校(東京、京都・法、一橋、大阪、早稲田、慶応など)の人気学部については、やはり「海外の高校卒業」が出願条件として明記されているのです。昨今の就職活動では、大学名で一次試験(書類選考)の合否を決める企業も少なくないため、保護者が子供の就職を踏まえてできるだけ難関校に進学できる道を整えておくことが大切です。
■理・社、古文の学力から決める
前述の「志望大学・学部の出願条件から決める」点以外に、単身滞在を選ぶ決め手となっているのは、高校生が「イギリスで頑張って勉強してきたIB、GCE、APカリキュラムを途中で終わらせ、突然一般入試の勉強に切り替える」ことに抵抗を感じている点です。例えば国立大学を帰国枠ではなく一般で受験すれれますし、入試科目が少ない私立大学でも、やはり古文・漢文をしっかりと勉強しなければなりません。ですから、これらの科目の学習経験に基づき、理科・社会、古文・漢文の学力を一般入試のレベルまで到達させるのは現実的かどうかをご検討のうえ、単身滞在か、高校編入かをご選択ください。
■よく受けるご質問への回答
最後に、単身滞在・編入についてよくいただくご質問を紹介します。
1.単身滞在について
「単身滞在では帰国枠で受験できない大学があると聞きます。大丈夫でしょうか」というご質問を受けますが、イギリス在住の高校生が志望する大学・学部では、総じて単身滞在でも帰国枠が使えますから、特に問題はないと言って良いでしょう。
2.編入先について
「大学は帰国枠を使って受ける予定です。この場合、編入先を選ぶうえで気をつけるべきことは何ですか」というご質問については、「高校の環境以上に〈帰国枠で複数の大学を受験するために、高三の九月以降に学校を何日か欠席するのを認めてくれるか〉や〈推薦状の執筆を快諾してもらえるか〉を確認したうえで編入先を選ぶ点」であると答えています。特に書類選考重視型の大学を受ける際は、編入先の先生の理解を得て、内申書や中身のある推薦状を書いてもらう必要があります。
もし、大学受験が一般枠であれば、編入希望先の大学進学実績を必ず確認してください。高校により、国立・私立大学合格者の比率は大きく異なります。国立大学合格者が多い学校は、理科・社会を含む五科目のサポート体制がある程度整っていると推測できますが、国立大学の合格者が少なければ、その高校のカリキュラムは私立大学受験型(理・社以上に、英語力強化を重視するなど)である可能性があります。
3.大学のAO入試について
編入の時期に関わらず受験できるAO入試は、帰国枠に比べ倍率が高くなる傾向があります。AO入試も視野に入れている場合は、まず志望大学のAO入試の受験科目や傾向を確認しましょう。小論文は多くのAO入試で課されている科目ですが、高校現代社会や時事問題の知識がなければ書けないものが多いため、放課後に塾や予備校などで時事問題の解説授業を受けたり、高校社会の教科書を使って自分で勉強したり、社説を書き写すなどの方法で、基礎力を身につけるように努めましょう。他には、英語力の証明となるTOEFL・TOEICの受験や、願書に添付する課題作文・レポートの題材や出願資格になるボランティアをすることも大切です。
2011年9.10月号
JOBAロンドン校 高校部責任者 仙波 未奈美