帰国枠入試相談室

第60回 現地校生の中学受験対策

2015年9月4日

英国政府による企業派遣者の滞在期間制限や、世間の急速なニーズの変化に対応しようという会社側の方針変更により、最近では、2,3年の英国滞在後に帰国される駐在員の方が増えてきました。それに伴い、子供を現地校に通わせた場合には、帰国後の学校に国立・私立校を選ぼうとすると、適当な学校が見つからない、または受験をしても合格できない、というケースが見受けられるようになりました。帰国子女枠は使えたとしても、英語力が足りない、国語・算数/数学の学習も不十分であるなどの理由からですが、以下には、小学4年生の後半に渡英し、初めて現地校に通う子供が、日本の中学受験をする場合の注意点についてお伝えしたいと思います。

〈中学受験の資格と入試科目〉
まず、右記のケースでは、受験時までに2年以上ありますので、ほとんどの学校で帰国枠が使えます。ただ、国立校には、3年以上継続して滞在する必要がある学校もあるため、注意は必要です。帰国枠実施校の入試科目は、国・算、算・英、国・英、国・算・英、英語のみ、少数ですが国・算・理・社などで、入試問題の難易度は、一般入試と同じテストや一般入試と同じレベル、一般入試より易しいなど様々です。なお、一般入試より易しいとはいえ、教科書レベルは超えた内容を出題する学校がほとんどです。また英語は、敢えて英検と比較するとすれば、2級を高得点で合格できるだけの英語力が求められます。

〈中学受験をする理由〉
さて、受験対策を考える前に、国立・私立校を目指す理由を明確にしておく必要があります。そして、子供に納得してもらう必要があるでしょう。子供にしてみたら、現地校の勉強だけで大変なのに、さらに負荷のかかる中学受験の勉強までは、それなりの理由がない限りやっていられないからです。ちなみに、親が国立・私立校を選ぶ理由は、子供が現地校生の場合は特に、英語力の維持伸長や似た環境で育った帰国子女とともに学ばせることができる、大学受験の実績がよく安心、などでしょう。子供にこれらの理由をしっかり伝えることは大事ですが、心からワクワクするような理由や自信がなければ積極的に取り組むことはできませんので、工夫は必要です。この工夫にはいろいろあるはずですが、効果的なのは、一時帰国の際の学校訪問と全面的にサポートする姿勢を親が見せることです。

〈受験対策〉
現地校に通った場合は、現地校の勉強だけでも大変なわけですから、中学受験をさせるなら、入試科目は英語 のみがよいと考える方が少なくないはずです。
ところが、その英語の問題や英作文には、どんなに努力しても2年では到達できないようなレベルを要求する学校が少なくありません。最も問題なのは、現地校で学ぶ語彙や文法レベルを超えていることで、現地校での学習はキャッチアップできるようになっても、それだけでは足りないことです。英語で受験レベルに到達できる可能性が少ないとなれば、国語と算数は、少なくとも教科書レベルの学習は、現地校入学後もできるだけ早いうちに始めたいところです。国・算・英型や国・英型や算・英型で受験するか、または国・算型に絞るかの判断は6年生になってからでも間に合いますが、6年生を迎えても英検2級レベルに到達していない場合は、国・算型に絞った方が良いかもしれません。

〈高校受験も考慮を〉
帰国時期の子供の学年が中1である場合、地元の公立中学の様子次第では、是が非でも国立・私立中の受験をさせたいと考えるのはやむを得ないことかもしれません。ただし、焦りすぎは禁物です。2,3年の英国滞在の場合、中学受験に合わせた勉強に時間を取られすぎては、伸ばせたはずの英語力が中途半端な状態のままで帰国することにもなり兼ねないからです。高校受験のことを考えると、国語と数学の力をつけることは大事なのですが、時間がありますので、ゆっくり取り組んでも間に合うはずです。その分、現地校の学習と英語力をつけることに時間を割くことができます。現地校での学習に一生懸命取り組み、英語力に自信を持ち、また国語と数学の力がバランス良く身につけば、高校受験の際には、選択できる学校が増えてきます。高校受験のみならず、これらの力は、将来にわたって役立つはずです。
折角勇気をもって通い始めた現地校、子供たちには実りある学校生活が送れるよう、そのことが帰国後の受験にも活かせるよう祈っています。

最新のアクロバットをダウンロード
「パンフレット」「申込書」をご覧いただくには、アドビシステムズ社で配布されている Adobe Readerが必要です。最新の Adobe Readerはこちらから無料でダウンロードできます。

ページの先頭へ戻る