本年度3月には、学芸大附属国際中等教育学校が、本年度五月には都立国際高校が、ともに国際バカロレア(IB)のディプロマプログラム(DP)の認定校になりました。これにより両校では、生徒にIBの統一試験を受験させることができ、このテストで基準点を満たした生徒は、海外の大学を目指しやすくなります。今回は、JOBA本部校の調査内容に基づき、この二校の取り組み内容のほか、IBの認定校ではないが、英語による授業を多く行う学校をご紹介します。また、これらの学校と日本にあるインターナショナルスクールとを比べ、それぞれの長所短所について考えたことをお伝えします。
【東京都立国際高校】
1月末に行われた本年度のIBコースの入学試験には、63名が受験し16名が合格しました。辞退者はありませんでしたが、退学者が出てその補欠募集を行った結果、現在は20名が在籍しています。退学者の1人は、英語の授業についていけなかったことが理由だったそうです。
都立国際のIBコースでは、1年目から国語や日本史などを除く教科を英語を母語とする教師が教え、2年目からは本格的なDPに取り組みます。このDPは、世界各地にあるインター校の多くが取り入れているプログラムと同じで、都立国際高校では、世界標準の教育を目指し、生徒には海外大学への進学を求めています。そのため、入学の時点で日本の大学への進学も考えている人にはお勧めできないとのことでした。DP認定校になるには、教員の確保のほか、校舎の増築や改築が余儀なくされるなど多くの費用がかかります。それにもかかわず、DPの試験費用を除けば、生徒の家庭の負担額は一般の都立高校と同じです。東京都が半ば命がけで、国際的に通用する人材を育成しようとしてできたのが、この都立国際のIBコースです。是が非でも生徒には海外大学を目指してほしいと考えるのも無理からぬところでしょう。
【東京学芸大学附属国際中等教育学校】
2007年に開校して以来、同校では英語によるイマージョン教育を取り入れ、英語以外の授業にも一部英語のみで指導する体制を築いてきました。2010年には、国際バカロレアの中等教育プログラム(MYP)の認定を受け、今年はDPの認定校にもなり、いよいよ来年の4月より15名ほどを対象にしたDPコースを開講する予定です。ただ、このDPコースは、都立国際のものとは異なります。正式名称はデュアル・ランゲージDPコース(DLDP)といい、日本語と英語でDPのプログラムを行うコースです。
文科省とIB機構では、日本語によるDPプログラムの導入を進め、現在では言語を除くすべての分野に、日本語で授業も試験も受けることができる科目が用意されています。(歴史、地理、経済、生物、化学、物理、数学、音楽、美術、Extended Essay<課題論文>、Theory of Knowledge略してTOK <知の理論>、Creativity/Action/Servicer略してCAS<創造性・活動・奉仕>)、つまり同校のDPコースは、日本語によるDPプログラムと英語によるDPプログラムを組み合わせたコースだと言えます。
ところで、日本語のDPで、海外の大学にいけるのかどうかというと、日本語DPのスコアに加え英語の実力が相応にあれば可能です。これは、日本語DPも他言語のDP同様、一切の妥協なく作られた世界標準の学習学習カリキュラムだと言うことができるでしょう。ただし、アメリカの大学を目指すのであれば、SATのスコアも要求する大学が多く、SATの勉強も並行して行う必要はあります。英国の場合には、DPのスコアと英語力があれば入学できる大学が多くありますが、オックスブリッジなどではCASでの実績も求められます。「NGOを自ら立ち上げ、その団体のリーダーとして支援活動を行った。」など社会との関わりに意欲的な人が評価されるようです。
ちなみに、東京学芸大学附属国際中等教育学校の入学試験は、編入試験も含め、中1から高3までを対象に、2月と7月に行われています(7月は中1?高2対象)。費用は、中学の授業料は無料ですが、諸経費と行事や副教材費などの学年費を合わせて40万円ほど、高校は入学料と授業料が必要で諸経費と教材費を合わせると60万円ほどは必要です。
【その他のDP実施校と実施予定校】
上記二校以外でDP認定校になっているのはすべて私立校で、インターナショナルスクールを除けば、加藤学園暁秀高校や玉川学園高等部、立命館宇治高校など10校があります。現在は、茗渓学園、さいたま市と札幌市の新設高校などが新たにDP認定校を目指しています。今後は、DP認定校を目指す学校がさらに増えることでしょう。それは、日本語DPができたからという理由だけではありません。DPを取得できれば、昨年決定したスーパーグローバル大学など、国内の大学にもDPのスコアを評価する大学が増えてきたためです。
【インターナショナルコース】
私立校の中には、IBの認定校にこそなっていませんが、大半の授業を英語で行うインターナショナルコースを設けるところが増え、人気を博しています。広尾学園中高、暁星国際中高、新設の三田国際学園中学などがそうで、学費を普通コースとあまり変わらない額に設定している点も魅力の一つです。
【インターナショナルスクールとの違い】
外国人とのコミュニケーション能力を身に着けることまで考慮すれば、先の日本のDP認定校もインターナショナルコース実施校もインターナショナルスクールには及ばないでしょう。ただ、英語力と日本語力とのバランスを大切するなら前者の方が有利で、足りない点は短期留学など学校外で補えば良いのかもしれません。200万円を超えるインターナショナルスクールの学費と比べ格安な点もありがたいところです。