先日、会議を目的にした一時帰国の合間を縫って、数年ぶりに日本で健康診断を受けました。
妻の勧めだったのですが、決断するまでは、ロンドンでいつでもできるのだから、会議で忙しい一時帰国中にするまでもないとずいぶん拒みました。ただ、充実した日本で受ける方が良いと、資料を見せられながら妻に説得され、今回は日本の「健康診断センター」にしぶしぶ申し込みました。
健康診断に積極的でなかったのは、ロンドンには日系の病院があり、健康診断はいつでもできるという安心感に加え、自分の身体のことは自分が一番よく知っているという自負心が強かったことは否めません。
自分ではたいしたことがないと思っていましたが、声が出にくく首の回りが熱っぽい、目やにが絶えない、便が細いなど、決して健康体だとは言えず、それに妻は気づいていたのだろうと思います。健康診断の結果は、予想よりもかなり悪く、今までの健康診断の結果には全く問題がなかったため、ショックを受けました。
私は痩せ型なのですが、脂肪肝でコレステロール値も高いというのです(後で調べると体型には関係がないとのことです)。しかも、大腸がんのリスクが高いこともわかりました。
こちらに戻ってきて早速ジムのメンバーになりました。ずるずると夜遅くまで仕事をしていたのを止めて、仕事の後にはジムで走り筋力トレーニングも取り入れました。夜遅い時間に取っていた夕食は一切やめて、睡眠時間を増やすようにしました。しばらくすると、便通はよくなり、目やにも少なくなりました。ただ心配が消えたわけではなかったため、NHSでも詳しく調べてもらいました。NHSは、どこか悪い可能性が高いと思われる場合には、瞬時に判断して徹底的に検査をしてくれます。NHSのおかげで、声が出にくく首の周りが熱っぽいのは、胃酸のせいで、ピロリ菌も影響している可能性が高いことがわかりました。声が出にくい理由は、ウイルスかアレルギー反応のせいだと思い込んでいただけに目からうろこが落ちる思いでした。今はピロリ菌の除菌も済み、声の出方も改善してきました。
年を取るほどに、自分のことは何でもわかっているつもりでいましたが、この健康診断を通して、自分のことさえあまりわかっていなかったことに気づかされました。なんと、妻に背中を押されるまで、自分の身体の限界にさえ気づいていなかったのですから。
さて、今回お伝えしたいのは、受験が差し迫ると、本人だけでなく親も受験のストレスを受けて、判断力や行動力が鈍りやすいということです。そして、そのことには気づいていない方が多いのではないかと思われることです。
人はストレスを受けて睡眠不足や運動不足のままの状態でいると、意欲の低下、発動性の低下、思考・判断力の低下、注意障害などが起きるそうです。私の身体については、判断力の低下ゆえに問題を見逃していたと言えるかもしれません。また、私の長男の受験のときのことを振り返ってみても、私自身の発動性が低下していたためか、手助けをしたいと思いながらも、結局大したことができなかったのを覚えています。
生徒のこの時期の様子を見ていると、リズム良く受験勉強に取り組み気力が充実しているように見える生徒がいる一方で、やるべきことに集中できず浮き足立っている生徒も見受けられます。
浮き足立っている生徒は、言動を見ればすぐに気づきますが、地に足をつけさせるのは、容易ではありません。生活全般の問題で、塾に来ている間の指導や声かけ程度では、事足りないからです。そして何より問題なのは、このような生徒の保護者は、往々にして子供の様子に気づいていない場合が多いことです。または、気づいていてもどう声をかけたらよいかわからず、何もできずにただ毎日が過ぎていくという家庭が多いのです。受験は一大事なのだから、家族が一丸になって本人を応援してほしいところですが、なかなかそうはいかないのは、前頭葉のいたずらのせいかもしれません。
私の健康診断の際には、妻が私の健康状態を把握し、半ば強引にも背中を押してくれたから良かったのですが、浮き足立っている生徒を助けるには、生徒本人への声かけやサポートだけでなく、親御さんのサポートも必要なのかもしれません。
紙面上では、十分な親御さんのサポートはできませんが、以下には、子の受験にどう向き合ったらよいかを記します。
①子供の学習状況と生活状況を完全に把握するようにしてください。
□通学校での取り組み内容、宿題内容の把握
□日々、1週間ごと、毎月の受験勉強のためのスケジュールの把握
□過去問の取り組み状況と結果および課題の把握
②現地校に通う中3生で、学校の宿題に追われて、受験勉強のために十分な時間を割けずにいる場合には、次のようにアドバイスしてみてください。
□現地校から出た宿題をする際は、宿題にかける時間をあらかじめ決めてから取り組もう。また、時間内に終わらなかったものにはこだわらず諦めよう。
(女子生徒は往々にしてまじめに取り組むため、そのことで反って自分を苦しめる生徒が少なくありません。脳に余裕を持たせるためにも「捨てさせる」ことが大事です。)
③受験は、家族を単位としたチームで戦うと決め、それを子供に理解させましょう。
(受験は、1つのゲームとして捉えた方がよいです。一人で乗り越えるものだという考えもありますが、一人で乗り越えなくてはならない機会は他にもいろいろあります。個人スポーツもプロの世界では、トレーナーだけでなく料理人までつけてチームで戦いますし、仕事もチームで一丸になって動いて初めて成果を出しています。受験だけ個人プレーのみで臨む必要もないでしょう。)
④上記①をした上で、少なくとも1週間に1回は、子供の勉強の手助けをしてください。
□漢字テスト、英単語テストをしてあげる。
□過去問や小テストなどを行う際に時間を計り、採点をしてあげる、など。
(一人で乗り越えられる強者もいますが、受験には伴走者が必要です。繰り返しになりますが、チームで戦いましょう。)
⑤適切なアドバイスや判断ができるよう、有酸素運動を親御さんもしてください。また子供にもさせてください。
(前頭葉の回復には、有酸素運動と睡眠が一番だそうです。)
受験は間近ですが、1月の受験であれば、まだ1ヶ月以上もあります。2月の受験ならば2ヶ月もあります。今後の取り組み次第では如何ようにも変わるでしょう。脳の力は比例的に伸びるわけではないそうです、指数関数的に伸びるのです。1週間後には2倍ですが、2週間後には4倍に、3週間後には8倍に、1ヵ月後には16倍、2ヵ月後なら256倍です。脳科学者が言っていることですが、これは本当だと思います。現に半年前には全く手がつけられなかった難問もできるようになっているのですから。
チームとして最もしなくてはならないのは、具体的なサポートもさることながら、本人の不安を取り除き、自信を持ってもらうことです。やればやるほどに実力アップすること、最後の最後まで諦めずにがんばれば、必ず良い結果がでること。もし、だめでも別な道があることを伝え、無心でがんばらせたいところです。
受験に向けて、チームJOBAとして、我々ができることはすべてやり尽くす所存です。
家族チームもぜひがんばっていただきたいと思います。