校長だより

自立に必要な3つのステップ

2019年3月12日

中学受験が終わり高校受験もほぼ終了し、受験生と保護者の方からは受験の報告が続々と届いています。第一志望校に合格し喜びに溢れた報告をしてくれた生徒、予想外の結果に打ちひしがれた後に合格を手にした生徒、苦戦を強いられた生徒など、今年の受験も悲喜こもごもでしたが、報告をくださったご家庭では、何より受験が無事終了したことを喜ばれ、やっと安心なさったようです。
一方、来年度以降の受験生を抱えるご家庭では、何かと不安を感じていらっしゃる頃かと思います。そこで今回は、受験に成功するための秘訣を、これまでの受験生とその保護者の方々の様子から考えたことを通してお伝えしたいと思います。

今回に限らず受験で成功する家庭に共通していたのは、次の2つのことができていたことです。1つは、早めに受験校すべてを決めたことです。もう1つは、受験生である子供が、受験を自分のために必要なことだと強く意識したことです。
早めに受験校を決めるとは、受験をする年の5月までには、第一志望校と併願校のすべてを決め、受験までの学習計画も作る、ということです。どの情報を信じてよいかわからず、決断をずるずると伸ばしてしまい、10月になっても受験校が決まらないようなケースもあるのですが、やはりこのような場合には、思うような結果には結び付きません。私たちは可能な限りの情報を提供しますので、期限を定めて決断して、十分な準備をした上で受験に臨んでくださればと思います。
2つ目の、「受験を自分のために必要なことだと強く意識する」とは、言い換えれば、精神的に自立をした上で受験に臨むということです。受験における成功には自立は欠かせませんが、子どもに自立をしてもらうことは簡単ではありません。このことを意識した上で、自立を促す方法について、考えてみたいと思います。

受験における自立をするには、私は3つのステップが必要だと考えています。1つ目は、自分で勉強を進められるという自信を持つことです。この自信が持てると、自分から進んで勉強するようになります。2つ目は、自分のために成功したいと強く思えることです。3つ目は、周りに認められることでしょう。周りに認められれば、それまでにしてきたことに自信を持てるだけでなく、周りからの応援も得やすくなります。周りからの応援を得れば、より大きな進歩が望め、更なる自信につながるのです。

受験における自立の第一歩である「自分で勉強を進められるという自信」を持ってもらうには、どうしたら良いのでしょうか。勉強に関する自己肯定感を小さいうちから持ってもらうに越したことはありませんが、この自己肯定感は、「ビリギャル」のストーリーからも窺えるように、いつからでも育てることができる一方で、いざ受験の準備に入ると自信を失ってしまう生徒もいます。つまり、勉強に関する自己肯定感を高めてもらうには、常に周りのサポートが必要だと言えるでしょう。
ところで、家庭は、何を・どのように・どこまでサポートすれば良いのかと考えると、悩ましいところでしょう。下手なサポートをしすぎれば、最も大事な自立(ここでは、自分で勉強を進められるという自信)には繋がらないからです。
家庭で、自立を促しつつ子供の勉強を手伝えるなら、どんどんやっていただきたいと思います。ただ、家庭での勉強面のサポートは必ずしも必要なわけではありません。家庭がまずすべきことは、子供の学習状況と生活状況を完全に把握することです。それらの把握ができれば、親は子供にどんなサポートが必要かを正確に探ることができ、より本人に合った情報やサービスを探すことができるはずです。
受験で成功する家庭は、子供に合った情報とサービスを得ることができたご家庭、と言っても過言ではないと思っています。

しかし、「自分で勉強を進められるという自信」が持てても、これだけでは、本当に自立したとは言えず、志望校に合格できるわけではありません。勉強に関する自信はもてても、進学の意義を見出せなければ、大きな力は出せないからです。そこで、「自分のために成功したい」という強い気持ちを育てることが大事になります。簡単なことではありませんが、伝記を読むことを勧める、新聞記事やニュースを通して成功者の姿に触れさせる、講演会など直接成功者から話が聞ける場があれば連れていく、演劇やコンサートに連れて行く、美術館に連れていく、など一流の人の行いに触れさせることが必要でしょう。
その際、「自分のために」とは、どんな自分のためなのか、よく考えてもらう必要があります。お金持ちになって豊かな生活ができることを、自分のための成功と捉える子もいるでしょう。このような考えを否定はしませんが、これでは完全な自立には繋がらないと、私は考えています。それは、「お金持ちになって豊かな生活をしたい」という気持ちしか持っていない人には、周りの人は関心を示さないからです。周りの応援が得られないと、本人の大きな進歩や更なる自信には繋がりません。つまり、自立に必要なステップの3点目である、「周りに認められること」に繋がらないのです。

では、受験生が、周りに認められ周りの応援を得るにはどうしたらよいのでしょうか。テストで点数を取ればよいのでしょうか。テストでいい点を取って褒められても、周りはお金持ちに対する態度と同じで、心の底からその人のことを認めているわけではありません。
受験生が教師に認められるには、約束を守ること、嘘はつかないことの方が大切です。約束が守れないことが分かったら、すぐに教師に相談しましょう。率先して前向きに取り組むことや、指示される前に行動することも大事です。がんばっている教師には、感謝の気持ちを忘れないことも大事でしょう。これらは親やクラスメイトと接する上でも、同じことです。いじめや誰かが辛い思いをするような言動は、もっての外であることは言うまでもありません。
周りに認められるには、勉強面以上に、普段の生活における姿勢が大事だといえます。つまり、受験生は、周りから普段の生活面における信頼を得ることも、自分の自立に大事だと考え、そのための努力をすることが大切なのです。そして親や教師に必要なのは、周りに認められることがなぜ大事なのかを子供に伝え、より良く導く声掛けをし続けることだと思います。

受験の成功には、本人の自立が欠かせず、その自立には3つのステップが必要ですが、この3つのステップを順よく踏んでいくには、周りのサポートが欠かせません。周りとは、JOBAの生徒であれば、親、学校の教師、JOBAの教師などで、この周りが連携を取ってサポートをすることが大事です。前回の私のJOBA便りのコラムでは、この周りをチームと表現しましたが、チームのメンバー全員が一致団結してサポートするのです。受験なんて、自分で乗り越えるものだ、放っておくのが良いと考える人もいるかもしれません。そういう考え方があっても良いでしょう。ただ、子供が受験で成功すれば、本人は自信を持ち次の自立に向かうことができるだけでなく、家族皆も幸せになれます。受験結果が家族の幸せにつながるのだとすれば、家族が一丸になって、受験というゲームに臨まない理由はないでしょう。
皆さまのご家庭では、私たちをチームの一員とみなし、私たちのサービスを、そして私たちをもっとうまく使ってほしいと思います。

ところで、ここ10年内の現象なのですが、塾生保護者から私に届くメールの宛名が、「木村 様」とされることが多くなりました。私は1995年から校長を務めているのですが、それまでは全くなかったことです。敬称の捉え方が変わってきている現れだとは思いますが、「様」は、よそよそしさを感じてどうも居心地悪く感じます。「先生」と言われると、信頼関係が築けているように思われ、また、自分もチームの一員だと思えて、やる気が一段と増すのです。

私たちは、お預かりした生徒のために努力を惜しみませんが、ご家庭では、うまく私たちを動かすことも、考えてくださればと思います。親、学校の教師、JOBAの教師などチームの全メンバーが互いを信頼し、子供たちをサポートできる体制が取れれば、その段階で、受験の半分は成功したと言えるほど、大事なことなのですから。

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