●種から育てる動機と意欲
《ゴードンメソッドによる子育てのヒント》
高校生のYくんは受験に向けて、理系か文系かの進路が決められず、悩んでいます。いまひとつ勉強にも身が入らない様子。
Y 「進路なんて簡単に決められないよ。別になりたい職業もないし、、理系は苦手だし、文系だって得意科目があるわけじゃないし。」
母 「あなた、わりと理系科目は良かったじゃない。とりあえず、理系にしておけば?」
Y 「…」会話が続かず終了。
夕食後に再び進路の話題になる。
Y 「だいたい、なんで今、理系か文系決めなきゃいけないんだろう? まだ将来なんてわかんないのにさ。」
母 「Yは簡単には決められないわけね。」*
Y 「うん、僕、勉強するより植物を育てるのが好きだし、楽しいし、すごく夢中になれる。」
母 「Yは植物を育てるのがすごく好きなんだね。」*
Y 「うん、自分で植物を育てて、成長記録をつけたりして…。もっと色々育ててみたいな。」
母 「確かに、夏休みに色々な花を庭に植えたわね。色んな植物を育てることに興味があるみたいね。」*
Y 「うん、だから図書館から植物の細胞の仕組みについて書いてある本、借りてきたんだ。凄く面白いよ。」
母 「へー。植物の細胞の仕組みって面白いんだ。」*
Y 「そう! あのね…」 細胞について熱く語り始める。
* 能動的聞き方…子どもの気持ちや考えを「あなたは、○○と思うのね。」と受け止める言葉掛け。
この会話の後、Y君は理系に進む事を自分で決めました。そして、勉強に意欲的に取り組んでいます。
学ぶ意欲を育てるには、種から育てるのが一番です。種とは、子ども自身の中にある○○をしたいという欲求、好きな事、夢中になれることなどです。
全ての子どもは素晴らしい<やる木>の種を持って生まれてきます。親がゴードンメソッドの能動的聞き方を使う事で、子どもの興味や関心がひきだされます。その種の中から学ぶ動機と意欲が大きく育っていくことがわかる素晴らしい事例です。
= 松浦留美子 =
Gordon Training Institute によって認可されたインストラクターとして、1986年より日本親業訓練協会に所属し、ゴードンメソッドの各種講座を提供。2002年からロンドンに住み、JOBAロンドン校で保護者向けの「親業ミニレクチャー」や「親業訓練講座」を開講。2019年1月に日本へ帰国後も、海外で子育てに奮闘する保護者の方々に役立つ情報を発信中。