7月の特別授業では、毎年戦争に関するテーマを取り上げてきました。来月の終戦記念日に焦点を当て、二度と戦争を起こさないためにはどうしたらいいかを生徒とともに考えるためです。
今年のテーマは、「原爆投下と長崎」とし被爆者が高齢に達し亡くなりつつある中、後世に原爆の悲惨さを伝えるためにはどうしたらよいかを考えてもらいました。その中で、本という形で後世を生きる人々へ語り継いでいこうと考えた被爆者の方々がいること、原爆の悲惨さを伝えるために残した小説、劇、詩、短歌などを「原爆文学」と呼んでいることを伝えました。また、長崎を代表する原爆文学の作家・林京子さんの第73回芥川賞受賞作品『祭りの場』の一部を生徒ともに読みました。
特別授業の生徒の感想を一部紹介します。 「林京子さんの『祭りの場』を読み、とても感動しました。また、未だに原爆症でなくなる人がいることを知り驚きました。あの時だけだと思っていた苦しみが、64年たった現在も続いていると思うと心が痛みます。」
「長崎の特別授業を通して、戦争に対する怒りと反発を感じた。この忘れられない出来事を次世代に語り継ぐためには、文学や芸術などによって伝えていくしかないと思う。しかし、年を重ねるにつれて忘れ去られていくのはどうしても防ぎきれないと思う。その前に、早く核兵器をなくすことに努めなければならない。」
戦後60年を迎えた2005年、NHKは日本とアメリカで大規模な原爆に関する意識調査を行い、その結果を踏まえアメリカでのインタビューなどを織り交ぜた報道番組を放映しました。その中で、原爆投下は正しい判断だったかとの問いに対して、57%のアメリカ人が Yesと答えていました。この結果の背景には、アメリカの教科書で原爆に割くページ数はわずかで、しかもその内容は原爆投下に至った経緯に留まりその後の惨状はほとんど伝えていないことにあるとNHKは指摘していました。つまり当時のアメリカでは今も原爆症に苦しむ人々がいること、被爆2世、3世がいることなど知るよしもなかったと考えることもできます。
この調査から4年たった現在、状況が好転していることを願います。そして核兵器廃絶に向けて唯一の被爆国を‘背負う’私たち日本人の役割は大きいと、あらためて思います。